2020本屋大賞受賞「流浪の月」を読む

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先日本屋大賞を受賞された凪良ゆうさんの「流浪の月」。

世間的には一緒にいることが許されない二人、ですが二人にとってはお互いがなくてはならない存在。恋人でも家族でもない男女の15年越しの再会を描いた切ないお話でした。

 

当人たちにしかわからない事情がある。けれど、その正当性を周りに訴えたところで決して理解されない。誤解され続ける運命。これって結構よくある話ではないでしょうか。

 

世界はまだまだ偏見で満ち溢れています。それならば、仕方ないと今は踏ん切りをつけて、周りからどう思われようと自分はこれで良いと思って乗り越えるくらいのタフさが必要です。

 

私の父は、私が小学校1年生のときにうつ病をきっかけに無職になり、それ以来ずっと家にいました。生活費や学費は母のパート代と母方の祖父母からの援助で賄い、どうにか暮らしていました。当時の友達からは「オカメのお父さんはどうしていつも家にいるの?」と言われ、返事に困っていました。周りから見ると、子供が二人もいるのに仕事もしないで家にいるダメな父親だったでしょう。ですが、父はそばにいる時間が長い分、私がわかるようになるまで何度も丁寧に勉強を教えてくれたり、芸術や文学についてたくさん議論してくれました。私にとって父は尊敬する存在でした。

オカメの通う中学校は進学校で親は医者という子がほとんどで、塾に通うのがスタンダードで、学校側も受験対策を塾に委ねているような風潮がありました。私は塾に通うようなお金はなかったため、わからないことは先生に質問に行ったり、同じ問題集を何度も解いたりしました。周りの子に負けたくないのはもちろんのこと、貧乏であることに負けたくなかったのです。

オカメはこの雑草魂と優しい人たちからのサポートのおかげで成長することができました。自由や可能性は与えられるものではなく、自ら獲得していくものだということを学生時代に学んだのでした。

 

たまにはこんな真面目な話もしていこうと思います。